賃貸トラブルは家賃滞納だけではありません。
ペット禁止のマンションで猫を飼っている入居者がいる…
他の入居者に迷惑行為を行っている人がいる…
無断で増改築が行われている…
転貸を勝手に行っている入居者がいる…
このような契約違反を犯す入居者の立ち退きをご希望のオーナー様はいらっしゃいませんか?
オーナー様からご相談を受けている不動産管理会社の方はいらっしゃいませんか?
本ウェブページでは、家賃滞納以外を理由とした賃貸借契約の契約解除と建物明渡しの流れを解説します。
なお、家賃未払を理由とした建物明渡しの流れについては、本ウェブサイトの「賃料滞納による建物明渡し請求の流れ」をご参照ください。
このページの目次
1 法律相談を行う
まずは弁護士との法律相談を行います。
お困りの事情を話して、証拠の有無や、賃貸借契約の契約解除が可能か否かについて、弁護士の見解を聞きましょう。
2 賃借人の債務不履行を立証する証拠の収集
法律相談の時点で、証拠が不足している場合、契約解除の通知を行う前に、弁護士から、準備するべき事項をお伝えすることがあります。
証拠の具体例として以下のようなものが挙げられます。証拠の収集に不安がある場合には、弁護士に伝えましょう。
ペット飼育禁止の違反
- 管理会社が入居者宅を訪問して撮影した、ペットや汚損状況の画像・動画や、入居者との会話の録音データ
無断増改築
- 増改築前の建物図面・写真
- 外観から増改築が明白な場合には、外観を撮影した画像・動画
- 内装の増改築の場合、管理会社が訪問して内装を撮影した写真や、入居者との会話の録音データ
居住用物件の店舗利用(用法遵守義務違反)
- 店舗看板を撮影した画像・動画
- インターネット上で店舗を検索した記録
- 管理会社が入居者宅を訪問して撮影した画像・動画や、入居者との会話の録音データ
3 必要に応じて、契約違反を是正するよう賃借人に催告する
契約違反の証拠が明白な場合であっても、多くの場合は、いきなり契約を解除することはありません。まずは、契約違反の是正指示を行います。
なぜなら、一度も是正指示をすることなく、契約を解除すると、賃貸人・賃借人間の信頼関係破壊が認められず、解除が無効となるリスクがあるためです。
ただし、賃借人が指示に従って契約違反を是正した場合には契約解除は難しくなります。
事案によっては契約違反の是正無しに無催告で解除通知を行うこともあり得ます。弁護士と方針をよく協議しましょう。
なお、契約違反の是正指示の段階から、弁護士に依頼することも可能です。
4 契約解除を通知する
契約違反の証拠が揃い、是正指示に賃借人が従わない場合、契約解除を通知します。
解除通知は、内容証明郵便を用いて行います。
契約解除通知も弁護士に依頼することが可能です。
5 必要に応じて、賃借人との交渉で解決することを試みる
必要に応じて、裁判にする前に、賃借人との交渉で解決することを試みます。
例えば、オーナー様が条件次第では入居者との契約継続を考えている場合は、交渉での解決ができる可能性もあります。
賃借人と賃貸人が双方合意する場合には、和解契約書を締結します。
賃借人との交渉も弁護士に依頼することができます。
6 退去を目指す事案などでは、早々に裁判所に訴訟を提起する
入居者を退去させたいというご希望が強い場合、早々に、裁判所に訴訟提起を行った方が良いでしょう。
近隣迷惑行為などが問題となる事案では、賃借人と会話することすらままならないこともあります。
訴訟提起にあたっては、訴状と呼ばれる書類などを作成の上、裁判所に提出することになります。
訴状の作成には専門知識が要求されます。弁護士に依頼することをお勧めいたします。
7 入居者が出頭して争ってくる場合、1か月半に1回程度のペースで期日が開かれる
訴訟において、賃借人が退去を拒絶して事実関係を争ってくることがあります。
この場合、1か月半に1回程度のペースで、裁判所で期日が開かれます。
第1審が終了するまで、通常、9か月間~1年6か月程度の期間を要します。
複雑な事案では、第1審だけで2年以上を要することもあります。
なお、第1回期日に賃借人が欠席した場合、後日、裁判所は建物明渡しを命じる旨の判決を言い渡します。
8 裁判上の和解にて、建物明渡しを約束させることを試みる
期日を繰り返し、裁判官が「この事件では契約解除は有効だ」との考え(心証)を持った場合、以下のような和解の提案をすることがあります。
賃借人には、このまま判決になると建物明渡しを命じることになると伝え、建物明渡しを約束する内容での和解を勧めます。
賃貸人には、賃借人が抵抗して判決後に控訴されてしまうと明渡しまでの期間が長引いてしまうと伝えて、明渡しまでの期間の猶予を与えた和解を勧めます。
裁判所の示唆を受け、賃貸人・賃借人双方が合意できれば、建物明渡しを約束する内容での裁判上の和解が成立します。
ただし、和解に応じるべきか否か、どのような和解内容にすべきかは事案によって千差万別です。弁護士とよく協議した上で、和解に応じるか否かを決めた方が良いでしょう。
賃借人が裁判上での和解で建物明渡しを約束したにもかかわらず、約束を破った場合には、強制執行という手段を用いて賃借人を強制的に退去させることができます。
9 訴訟で和解できない場合には、建物明渡しを命じる判決を裁判所に言い渡してもらう
和解ができない場合には、裁判所に建物明渡しを命じる判決を言い渡してもらいます。
判決の場合、訴訟提起から判決まで1年以上経過していることが多いでしょう。
10 第1審の判決後には控訴審が行われることがある
第1審の判決には、控訴することができます。
例えば、千葉地方裁判所の判決に賃借人が控訴した場合、東京高等裁判所で再度審理を行うことになります。
控訴後の審理を控訴審と言います。
通常、控訴審でも裁判上の和解の機会が設けられます。和解が成立しない場合には、控訴審においても建物明渡しを命じる判決を言い渡してもらいます。
判決に至るまでの期間は、通常、控訴から6か月程度を要します。
当事務所も含め、控訴審に移行した場合、弁護士費用も増加することが多いでしょう。
第1審の段階で、このような控訴された場合のデメリットを踏まえて和解の可否を判断することになります。
なお、理論上、控訴審の判決にも上告することができます。ただし、上告されるケースは稀です。
11 訴訟終了後も、自主退去しない場合には、建物明渡しの強制執行を行う
建物明渡しの判決に賃借人が従わない場合や、裁判上の和解を破って賃借人が自主退去しないこともあり得ます。
このような場合、裁判所に建物明渡しの強制執行を申し立てて、強制的かつ合法的に賃借人を退去させることになります。
強制執行の流れは本ウェブサイトの「滞納者が判決に従わずに退去しない場合」に記載しております(建物明渡しの強制執行の流れは、賃料未納の場合、それ以外の債務不履行の場合で目立った違いはありません。)。
注意すべきことは、明渡しの断行により、明渡しを実現すると、弁護士費用だけではなく、裁判所や執行業者にかなりのお金を支払う必要があるということです。
費用は主に荷物の量に応じて変わってきます。費用のイメージは、極めて割高な引越しを行った場合に要する金額です。予め覚悟しておいた方が良いでしょう。
なお、筆者の個人的な所感に過ぎませんが、近隣迷惑行為が問題となる事案では、判決言い渡し後も、賃借人が強く抵抗する可能性があります。強制執行に至る可能性を見据えておくべきでしょう。
12 詳しいことは実際に相談してみよう
こちらのウェブページに記載したことは一般論に過ぎません。事案に応じて対処方法を細かく変えていかなければなりません。実際に発生した事案に対処する場合には、弁護士に相談した方が良いでしょう。
オーブ法律事務所では、家賃滞納以外の債務不履行を理由とした建物明渡請求に関するご相談・ご依頼も受け付けております。
是非、法律相談の予約をご検討ください。
※2023年1月執筆当時の情報を前提としたものです。
本記事の記載内容に関して当事務所・所属弁護士が何らかの表明保証を行うものではなく、閲覧者が記載内容を利用した結果について何ら責任を負いません。