オーブ法律事務所に建物明渡を依頼した場合の弁護士費用や実費は、強制執行を行ったか否か、賃料がいくらか等の具体的な事情によって異なります。
このページでは、いくつかの異なる想定事例を用いて、オーブ法律事務所に建物明渡請求を依頼する場合の、弁護士費用と実費の合計額をシミュレーションしています。
費用の目安を知るための参考としていただければ幸いです。
弁護士費用の算定方法については、本ウェブサイトの「建物明渡の弁護士費用」、実費については、本ウェブサイトの「建物明渡に関する執行費用などの実費」もご覧ください。
このページの目次
シミュレーション①
ワンルームマンションにつき、賃料未払を理由として、契約を解除し、訴訟を提起し、和解によって建物明渡しを実現した想定における、弁護士費用・実費の合計のシミュレーション
弁護士費用・実費の合計の目安
50万円程度
費用発生の流れ
千葉市内のワンルームマンションで3か月の家賃未納が発生した
賃借人は個人で、滞納の理由は精神疾患による失業であった
賃借人はサラ金の借金も抱えており、サラ金業者から訴訟も提起されている
連帯保証人は賃借人の父親であり、契約当初は就業していたが、現在は病気で失業してしまい、生活保護を受給している
家賃保証会社をつけていなかった
賃料・管理費の合計金額は税込9万9000円
マンション1室の床面積に相当する固定資産税評価額を計算すると220万円
建物明渡しをオーブ法律事務所に依頼
着手金16万5000円(税込)・書類郵送費用見込額2750円(税込)を支払
訴訟提起前に、賃借人の部屋へ弁護士が1度訪問(往復1時間20分)
日当3万3000円(税込)を支払
賃借人・連帯保証人を被告として千葉地方裁判所本庁に訴訟提起
- 裁判所提出書類の取得費用の支払
賃貸物件の登記簿謄本 600円
賃貸物件の固定資産評価証明書 500円
賃借人・連帯保証人の住民票 1000円 - 訴訟提起時に裁判所に納める以下の費用の支払
印紙 1万1000円
予納郵券 6000円 と 被告1名追加の2178円
裁判所での初回の期日にて、賃借人が1か月の猶予期間内に退去する旨の和解が成立
自主退去しなかった場合に備え、強制執行時提出書類の取得費用の支払
執行文付与の印紙代 300円
送達証明書取得の印紙代 150円
猶予期間内に、賃借人が自主的に退去し、強制執行を経ることなく明渡しを実現
明渡を実現した場合の報酬 27万5000円(税込)の支払
以上の合計で49万7478円
コメント
賃料未払を理由とした建物明渡を想定しています。
建物明渡の強制執行に至らずに明渡しが実現できると、このシミュレーションのように比較的費用を抑えることができます。
賃料・管理費の合計金額は税込9万9000円を想定しています。賃料・管理費の合計金額次第では、着手金や報酬が増額になります。
詳しくは「建物明渡の弁護士費用」をご覧ください。
また、マンションの固定資産税評価額次第で訴訟提起時の印紙の金額が前後します。ほとんどの事例では印紙代は数万円以内で済みます。
シミュレーション②
シミュレーション①の事例で、賃借人が自主退去せず、建物明渡の強制執行を申し立てて、明渡の断行を行い、明渡しを実現し、残置物は執行業者の倉庫で保管の上、処分した場合における弁護士費用・実費の合計のシミュレーション
弁護士費用・実費の合計の目安
90万円から110万円程度
費用発生の流れ
シミュレーション①の事例で、結局、賃借人が自主退去しなかった。
強制執行の依頼
着手金11万円(税込)の支払
裁判所に納める予納金7万円の支払
明渡の催告を実施
執行業者へ執行技術者立会費用・鍵技術者費用5万円程度を支払
明渡の断行を実施して明渡を実現
残置物は執行業者の倉庫で1か月保管の上、処分
明渡を実現した場合の報酬として27万5000円の支払
執行業者へ以下の費用を支払
断行当日の作業費用 ワンルームマンションの場合20万円程度
残置物の保管費用、売却期日における執行業者の立会費用など 合計10万円程度
以上の合計は102万円程度
※ 強制執行を行ったシミュレーションですので、現場状況などを理由に金額がズレることが見込まれます。
コメント
建物明渡の強制執行にて明渡しを実現すると、このシミュレーションのように費用が高額となります。
明渡しの催告を行った後に、賃借人が自主退去すれば、断行当日の作業費用、残置物の保管費用、売却期日における執行業者の立会費用などが不要となります。上記シミュレーション上では30万円程度安くなります。
㋐断行当日に入居者が残置物の所有権を放棄することを表明した場合、㋑賃貸人が残置物の保管場所を提供できた場合、㋒残置物を現場で保管することが決まった場合には、残置物の保管費用、売却期日における執行業者の立会費用などが不要となります。上記シミュレーション上では15万円程度安くなります。
ただし、建物明渡の強制執行に要する費用は荷物の量などによって増減します。あくまでも目安に過ぎないことはご留意ください。
また、このシミュレーションはワンルームマンションを前提としておりますので、断行当日の作業費用が20万円程度で済んでいます。
断行当日の作業費用は、ファミリー向けのマンションの場合40万円~60万円程度、2階建の一戸建の場合70万円~100万円程度必要となる可能性があります。詳しくは「建物明渡に関する執行費用などの実費」をご覧ください。
シミュレーション③
ワンルームマンションにつき、迷惑行為を理由として、契約を解除し、訴訟を提起し、賃借人が第1回期日に欠席し、シミュレーション②と同様に建物明渡の強制執行を通じて明渡しを実現した場合における弁護士費用・実費の合計のシミュレーション
弁護士費用・実費の合計の目安
120万円から150万円程度
費用発生の流れ
千葉市内のワンルームマンションの賃借人が、他の入居者を脅迫する内容の手紙を投函し、約定に反して近所の野良猫を餌付けして室内に入れている
賃借人は個人で生活保護受給者
行政が生活保護費から賃料を支払っているため、賃料の滞納は無い
連帯保証人は無し
賃料・管理費の合計金額は税込7万7000円
マンション1室の床面積に相当する固定資産税評価額を計算すると170万円(印紙9000円)
建物明渡しの訴訟提起をオーブ法律事務所に依頼
着手金33万円(税込)・書類郵送費用見込額2750円(税込)の支払
訴訟提起前に、賃借人の部屋へ弁護士が1度訪問(往復1時間20分)
日当3万3000円(税込)の支払
賃借人を被告として千葉地方裁判所本庁に訴訟提起
- 裁判所提出書類の取得費用の支払
賃貸物件の登記簿謄本 600円
賃貸物件の固定資産評価証明書 500円
賃借人の住民票 500円 - 訴訟提起時に裁判所に納める以下の費用の支払
印紙 9000円
予納郵券 6000円
裁判所での初回の期日にて、賃借人が欠席。後日、建物明渡を命じる判決。
自主退去しなかった場合に備え、強制執行時提出書類の取得費用の支払
執行文付与の印紙代 300円
送達証明書取得の印紙代 150円
判決確定証明書取得の印紙代 150円
強制執行を申し立てることに
以後シミュレーション②と同様
報酬は44万円(税込)
以上の合計で135万円程度
※ 賃借人が欠席せずに訴訟で争い、千葉地裁で10回期日が開かれた場合には日当合計13万2000円が別途発生します。
※ 強制執行を行ったシミュレーションですので、現場状況などを理由に金額がズレることが見込まれます。特に迷惑行為の案件では、物件の室内が乱れていることがあります。注意が必要です。
コメント
迷惑行為を理由とした建物明渡は、賃料未払による建物明渡と異なる弁護士費用となっております。詳しくは「建物明渡の弁護士費用」をご覧ください。
このシミュレーションは強制執行により明渡しを実現したものとなっております。和解が成立して賃借人が自主退去した場合には、強制執行に要する弁護士費用や実費は不要となります。
仮に、このシミュレーションで強制執行に至らずに退去を実現した場合、弁護士費用と実費の合計金額は約82万円となります。
ただし、筆者の所感として、迷惑行為を理由とした建物明渡が問題となる事例は、建物明渡の断行に至る可能性が相当程度あります。強制執行に至る可能性があることは予め覚悟しておいた方が良いでしょう。
シミュレーション④
アパートの建替えを目的として、弁護士に1室の入居者との立退き交渉を依頼し、90万円の立退料支払って、立ち退きを実現した場合における弁護士費用・実費の合計のシミュレーション
弁護士費用・実費の合計の目安
200万円程度
※あくまでも立退料が90万円だった場合
費用発生の流れ
老朽化したアパートの建替えをすることにした
建設会社から費用の見積もりも取得した
入居者全員に賃貸借契約の更新を拒絶する旨の通知を行い、ほとんどの入居者は退去に応じた
しかし、1部屋の入居者が退去を拒んでいる
入居者の家賃滞納や債務不履行は無い
賃料・管理費の合計金額は税込7万7000円
入居者の退去の交渉をオーブ法律事務所に依頼
着手金33万円(税込)・書類郵送費用見込額2750円(税込)を支払
交渉の結果、立退料を90万円(前金45万円・残金は退去後1週間以内に45万円)、原状回復義務を免除することで入居者との和解が成立
立退料前金45万円支払
その後に入居者が退去し明渡実現
退去後1週間以内に立退料45万円支払
報酬66万円(税込)支払
交渉経過の中で、弁護士が3度現地を訪問(往復1時間20分)
訪問終了の都度、日当3万3000円(税込)×3を支払
以上の合計で199万1750円
コメント
債務不履行が無い普通借家契約の賃借人を更新拒絶により退去させる場合、正当事由が必要となります。正当事由が認められるには立退料が必要です。
この点については、本ウェブサイトの「借家契約の更新拒絶における正当事由」をご参照ください。
正当事由・立退料が問題となる建物明渡は、異なる弁護士費用の体系を採用しております。
詳しくは「建物明渡の弁護士費用」をご覧ください。
このシミュレーションは和解交渉により明渡しを実現したものとなっております。訴訟を提起する場合には44万円(税込)の着手金が別途必要となります。
このシミュレーションは立退料の金額を90万円とすることで和解できた例となっております。
しかし、立退料の金額は事案によって千差万別です。必ずしも立退料90万円で立退きが実現できるわけではありません。90万円は比較的安価に済んだ例です。
居住用物件の立退料は数十万円程度で済んだ裁判例がある一方、100万円以上、200万円以上、高額なものでは500万円とした裁判例もあります。
詳しくは本ウェブサイトの「立退料の相場」をご覧ください。
※2023年1月執筆当時の情報を前提としたものです。
本記事の記載内容に関して当事務所・所属弁護士が何らかの表明保証を行うものではなく、閲覧者が記載内容を利用した結果について何ら責任を負いません。