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この実績例に書かれている内容(目次)
1 ご相談概要
2 解決までの道のり
3 弁護士のコメント・感想
弁護士の瀬川尚吾が取り扱った実績例のご紹介です。
今回は家賃未納の飲食店を訴訟・強制執行にて退去させたケースを取り上げます。
1 ご相談概要
ご相談者は、ビルを所有されているオーナー様でした。
ご相談者は、ビルの1階を、飲食店を営む法人に賃貸していました。賃借人法人の代表者は、外国籍の方でした。
ところが、飲食店の経営状態が芳しくなく、家賃の滞納に至っておりました。ご相談前にオーナー様自らが対処され、家賃支払を約束する念書などを取得されていました。しかし、結局、滞納が継続し、ご相談にいらした段階では、6か月以上、家賃が滞納している状態でした。
2 解決までの道のり
この事例は、法人が賃借人となっており、その代表取締役が連帯保証人となっているパターンでした。賃借人の飲食店経営は立ち行かず、現実問題、未払賃料の回収は困難でした。
そこで、建物明渡しを求める訴訟を提起し、早期の退去を目指すことにしました。
もし外国籍の代表者に日本語が通じない場合、訴訟を継続するにあたって、法廷での通訳人が必要でした。しかし、幸いにして、日本語が通じる方でしたので、通訳人は不要でした。
裁判では、賃借人は、家賃滞納の事実を認めました。ですが、家賃の弁済計画を立てるので、建物明渡しは猶予してほしいという主張を始めました。しかし、従前の経過からすると、賃借人法人が約束を守るとは思えず、当職はこれを断り、判決言渡を希望しました。そのため、後日、建物明渡しを命じる判決が言い渡されました。
その後は、強制執行に移行しました。強制執行の明渡しの催告当日、当職は執行官、執行業者、立会人と共に現場に臨場しました。賃借人法人の従業員は何も知らされていなかったのか、仕込み作業を行っていました。執行業者と協議の結果、大型の調理設備を撤去すると多大な費用を要することになるので、調理設備は断行当日に現地で売却して、賃貸人が買い取るという処理を行う予定としました。
賃借人はその後も自主退去しなかったため、明渡しの断行が実施されました。事前の打合せのとおり、大型の調理設備は賃貸人が現地でそのまま買い取って移動させないことになりました。細かい什器備品は廃棄処分となりました。
これらの過程を経て、明渡しが実現しました。なお、経済的合理性の観点から、未払賃料の回収を求める強制執行は行わないことになりました。
3 弁護士のコメント・感想
法人が賃借人の場合、代表者が連帯保証人となっているだけで、家賃保証会社がついていないことが珍しくありません。この場合、家賃滞納の問題を家賃保証会社任せにすることができません。しかし、オーナー様自らが対処することは難しく、徒に未納の家賃が増大してしまうかもしれません。
この事例も、弁護士への相談がもっと早ければ、明渡し実現までの未払賃料の金額を、より抑えることができたかもしれません。
余談ですが、強制執行の申立てを行ったあたりから、同種の飲食業者から、居抜きで借りたいという問い合わせが弁護士に来るようになりました。こういった話はすぐに出回るものなのかもしれません。後日、賃貸人の方は、既存の調理設備をそのまま利用できる飲食店の方に、賃貸されたようです。